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人物秘話

ヴェルサイユに散った19歳の花

2026年07月27日 20:00
ヴェルサイユに散った19歳の花

1661年、フランス南部オーヴェルニュの古い貴族の家に、後のフォンタンジュ公爵夫人となるマリー・アンジェリクが生まれた。この娘がやがて太陽王ルイ14世の寵愛を受け、わずか19歳で謎の死を遂げるとは、誰も予想していなかった。

ベネチアンブロンドの髪、ミルクのような肌、ブルーグレーの瞳——彼女はまさに絵に描いたような美少女だった。明るく快活な性格も相まって、地方貴族の令嬢ながら宮廷に迎えられる。

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その時が訪れたのは1679年。彼女は王の義妹パラティーヌ姫に仕える女官として、ヴェルサイユ宮殿に出入りしていた。

ある夜会の席のこと。ルイ14世の目が、一人の若い女官に留まった。 「あの娘は誰だ?」 王の問いに、側近が小声で答える。「フォンタンジュ嬢と申します。パラティーヌ姫付きの女官でございます」

出会いから半年と経たぬうち、彼女は王の深い寵愛を受けるようになった。八頭立ての馬車、護衛、莫大な金品——王は贅を尽くした。

そして「フォンタンジュ公爵夫人」の位まで授けられた。地方貴族の娘にとって、まさに夢のような日々だった。

ところが——1680年、悲劇が訪れる。彼女は王の子を身ごもったが、早産で男児は死産。さらに出血が止まらず、美しい身体は異様に膨れ上がった。

かつてルイを魅了した顔も腫れあがり、彼女は自らの姿を恥じて人前に出られなくなった。 「もう…私を見ないでください…」 彼女の嗚咽は、誰にも届かなかった。

病弱な女性を嫌うルイ14世は、彼女から遠ざかった。絶望のうちに宮廷を去り、修道院へと姿を隠したフォンタンジュ嬢。

しかし病状は改善せず、苦痛は日々増すばかり。1681年6月28日——彼女は帰らぬ人となった。享年わずか19。

その時——宮廷に衝撃が走る。あまりに突然の死に、「変死」の噂が渦巻いた。

ちょうどその頃、パリでは「ラ・ヴォワザン事件」と呼ばれる大スキャンダルが発覚していた。怪しげな女黒魔術師ラ・ヴォワザンの元へ、貴族や貴婦人たちが毒薬や呪術を求めて通っていたのだ。

関係者は400人以上。拷問の末、ラ・ヴォワザンの娘マルグリットが証言した。 「母の協力者たちがフォンタンジュを毒殺しました。背後には…モンテスパン夫人が…」

モンテスパン夫人——かつてルイ14世の寵愛を独占した女。新たな寵姫の出現に、嫉妬の炎を燃やしたとしても不思議ではなかった。

しかし、真相は闇の中。ラ・ヴォワザンは処刑され、モンテスパン夫人は王の寵愛を失ったが、フォンタンジュ嬢の死の謎は解かれなかった。

近年、歴史家プチフィスは別の仮説を提示している。モンテスパン夫人の侍女デゾワイエ嬢こそが真の黒幕ではないかという。

この侍女は王との間に私生児をもうけながら、公式な立場を得られず、恨みを募らせていた。さらに当時フランスと対立するイギリスの貴族と関係があったとも言われる。

個人の怨念か、国家の陰謀か——真実は今もヴェルサイユの闇に沈んだまま。

咲き誇った花は、数多の思惑に絡め取られ、あっけなく散った。華やかな宮廷ほど、無垢な魂は早く命を燃やし尽くすのかもしれない。

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